Ratioって何?アメリカ中学生が最初に習う“比”の学び方と実例
- Manami Fujita
- 6月26日
- 読了時間: 5分
アメリカの中学数学では、実生活に根ざした概念を重視して学びます。
その中でも最初の単元で多く登場するのが「Ratio(比)」という考え方です。
この「Ratio」は、日本語で「比率」や「割合」と訳されることもありますが、単なる計算ではなく、「量と量の関係性」を多角的に捉える力を養うものとして位置づけられています。
今回は、アメリカの中学数学の授業でRatioをどのように導入・学習しているのかを、現地のカリキュラムを参考にしながらご紹介します。

Ratioとは?——「2つの量の関係性」を表現する言葉
Ratio(比)とは、2つ以上の量を比較して、その関係性を言葉や数字で表す方法です。
たとえば、
赤いリンゴが6個、青いリンゴが3個あった場合、赤と青のリンゴの比は「6対3」や「6:3」と書けます。
3カップの小麦粉に対して2個の卵を使うレシピなら、「3対2の比率」と表現できます。
アメリカの中学校では、こうした身近な数量の例を用いながら、Ratioの考え方を導入します。
これは日本の「割合」や「分数」の単元にも似ていますが、Ratioは言語活動を伴う点が特徴的です。
アメリカの中学数学:Ratioの授業の進め方
アメリカの授業では、「Ratioの定義」を押しつけるように教えるのではなく、生徒たちが自分の言葉でRatioを使ってみることに重点を置いています。
① 日常のモノを使って分類し、比を作る
まず生徒たちは、ブロックや図形、身の回りのモノを観察し、それらを色、形、大きさなどの属性でグループ分けします。
例:「赤いブロックが8個、青いブロックが4個ある。赤と青の比は8:4。」
このように、目で見てわかるものを使って比を表すことで、数学が単なる数字遊びではなく、実世界の「ものの見方」であることを体感します。
② 比の言い方を複数学ぶ
比の表現方法には、いくつかのパターンがあります。アメリカでは、これらすべてを「正しい方法」として紹介します:
The ratio of A to B is 3 to 2.
The ratio of A to B is 3 : 2.
There are 3 As for every 2 Bs.
言い換え練習を通して、言葉と数字の両方で比を表現する力を養います。
英語力と数学力を同時に高めるスタイルは、アメリカの中学教育の大きな特徴でもあります。
比を使って図を描く:視覚的理解を促す
比の概念が言語で表現できるようになったら、次は図形やブロックを使って比を可視化します。
たとえば:
「赤2つに対して青1つ」の比を持つ長方形を色塗りする→ 赤い部分が全体の2/3、青い部分が1/3になるように塗る
この活動を通して、比と面積・形・比率の感覚がつながり、「2:1という比は、実際にはどんな見た目なのか」が理解できます。
また、「合計が24平方単位の長方形に色を塗る」という課題では、面積や単位、分数の知識も同時に活用します。
つまり、Ratioの学習は他の単元ともリンクする「数学的思考の土台」を築くものなのです。
生徒自身のコレクションで比を分析
アメリカの中学では、「教師のコレクションを観察して比を書く」→「自分の持ち物を使って比を書く」という順で、段階的に学習が進みます。
自分のペンや文房具、図書カードなどを3つのカテゴリに分け、それぞれの数量を表にまとめます。
そして:
The ratio of pens to erasers is 5 to 2.
There are 2 notebooks for every 1 pencil case.
など、自分の環境から数学を発見していく形式で、主体的な学びを促進します。

なぜRatioは重要なのか?
Ratioは、次のような多くの場面で登場します:
レシピや料理(3カップの水に対して2カップの米)
地図(縮尺)
スポーツ(打率、勝率)
経済(為替レート、物価比)
つまりRatioは、生活・社会・自然すべてに通じる「関係性をとらえる力」です。
アメリカの教育現場では、こうした応用例も豊富に紹介し、「この数学はなぜ学ぶのか?」
という問いに自然と答えられるように設計されています。
日本とアメリカの中学数学の違い
日本では、Ratioにあたる内容は「割合」や「速さ」など、やや抽象的な単元として扱われがちです。
一方アメリカでは、「Ratio=関係性を言葉で表す力」として、コミュニケーション能力と結びつけながら学ぶ点が特徴的です。
また、日本の授業では黒板を中心に計算式を重視する傾向がありますが、アメリカの中学数学では、ペアワーク、ディスカッション、図や実物を使ったアクティビティが重視されます。
この違いは、アメリカで駐在や留学をしている日本人家庭にとっては、戸惑いの一因にもなるでしょう。
しかし、Ratioの学び方に触れることで、「数学=記号操作」ではなく、「考える力を育む言語活動」なのだと実感できます。
まとめ:Ratioは「数のセンス」を育てる鍵
アメリカの中学数学で最初に学ぶ単元の一つであるRatio(比)は、単なる数学の用語ではなく、「量と量の関係性を見抜き、言葉で説明する力」を育むものです。
分類・言い換え・視覚化・ディスカッションなどを通して、Ratioの考え方は日常生活から社会まで幅広く応用されていきます。
アメリカで暮らす中学生やその保護者にとって、Ratioの授業は単なる計算を超えた「思考のレッスン」として意味を持ちます。
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記事作成者 (Manami Palmini) ![]() 講師経歴
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